| 異色のアプローチ TOMBOW リポーター4 |
|
広く標準になり得る可能性を秘めている 多色ボールペンの歴史は、1964年にゼブラの3色ボールペン(スリーカラー)が登場してから40年以上になるが、当初から実用性が高く、現在に至るまでその基本構成はほとんど変化していないといっていい。一見完成されたように思われる製品だが、しかしそこに新たな可能性を見いだすのが文具メーカー。各社それぞれ得意の技術やアイデアで付加価値を持たせ、熾烈な開発バトルを繰り広げている。持ちやすく疲れにくい(場合によっては疲れを癒す!?)グリップ、分厚いものにも挟めるクリップ、デジタル機器用の入力ペンの採用etc.。 そんな中でも異色のアプローチを見せているのがこの「リポーター4」だ。リポーターという名は、このボールペンのコンセプトそのものだ。このボールペンは、記者が取材をしている状況を想定してデザインされている。最大の特徴は、4色すべて異なるノックパーツの形状だ。これは映像を使ったプレス発表などの薄暗い会場内で、また、インタビューで相手の目を見てあいづちを打ちながら、記者がボールペン本体を見ずに手探りだけで素早く色を選べるというものだ。また、本体内部にはノックのスライダーが戻るときのカチンという音を軽減するために、スライダーの衝撃を受け止める(残念ながらその消音性能はあまり高くないが)ゴムパーツが内蔵されていたり、人の話を聞く際に邪魔になる要素を軽減している。 廉価版の4色ボールペンとしてはかなり細身の直径12mmのボディは、まっすぐ平行で、ゴムグリップと軸の境目さえも余計な段差なくつながっており、携帯性が高く、大きめのペンループにさすこともできる。最小限まで細く控えめなクリップは板バネ内蔵の可動式で、かなり厚いものも挟めるようになっている。ペンケースに入れることよりも、単体で手帳と一緒に携帯することを想定したデザインといえる。どこまでも真面目なこのペンの立ち位置が、設計すべてに行き渡っている。思いを紙にぶつけるのではなく、人の話に耳を傾けるためのボールペン。空気のように気配を消し、リポートに集中させるための脇役。道具に徹することがこのボールペンのプロフェッショナリズムだ。 もちろん、見ないで色が選べたって、結局は見ながらメモを取ることになるわけだが、ペン先を出す際に本体を見なくてよいのは、パソコンでいうと、キーボードショートカットぐらい便利だし(これをユニバーサルとか言わないところがトンボはオトナだ)、色と形を対応させるというこのアプローチは、ボールペンの枠を超えて今後広がりを見せる可能性を充分持っていると思うのだ。 このような「記号」は、できれば独占するのではなく、さまざまなメーカーや業界が共有してほしいと思う。色をカタチや質感で表す簡単な標準として、ひょっとしたら文具以外のジャンルにまたがったりして、今は当たり前になったシャンプーボトルのデコボコや、テレホンカードの切り欠きのような公共性の高い指標を生み出す種になり得るのではないかと思ったりもしている。 |
|
究極の文房具カタログ ロコモーションパブリッシング 2006年2月発行 誰よりも文房具を愛して使い倒している「文具王」高畑氏が厳選した、「究極」と呼べる文房具の カタログ的コラム集。定番商品が定番である理由がこの一冊でわかります! →今すぐ購入する(amazon) |
文章の無断転載・複製・他サイトへのアップロードは一切お断りいたします。